《MUMEI》

電話の向こうで"愛香らしいな"と笑っている健太。

どうしてこいつは、私がこんなに可愛いげなくて上から目線でも何にも言わないんだろう。

私が健太の立場だったら絶対にキレてるし、映画だって断ってたよ。


『まあ、誘ってくれてありがとな〜!金魚生きてっか?』


ねぇ、健太…。

ちょっとは怒ってもいいよ。

てか、むしろ怒ってよ。

素直じゃない私に、可愛くない私に、"ふざけんな"とか"いい加減にしろ"とか、全然言っていいのに。


「生きてるよ…。だって、意外と真剣に育ててるし」

『お〜!まじか!その調子で金魚死なせんなよ〜』

「…いつかは死んじゃうな」

『金魚が可哀相だろ(笑)』


健太はさ、私のことどう思ってんの?

冷たい奴?偉そうな奴?

健太は私に優しいけど、私は健太に優しくしたことあるっけ…?

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