《MUMEI》

…てか、あいつ遅…。

ドリンクのコーナーそんな遠くないのに、何でこんな遅いの?


「わりぃわりぃ!あ!もうきてんじゃん!」

「あんた、まじで遅…あ…」


健太の手には二つのコップ。

その一つを健太は笑いながら私の前に置いた。


「いやー、愛香って何が好きか分からなくてさ!悩んで悩んで結局、アイスティーにしちゃったわ!」


頼んでもいないのに…。

健太の優しさに、何だか胸が痛くなった。

"遅い"なんて思ってた私に腹が立つ。


「…アイスティーでいいよ、全然…てか、取りに行ってくれるなら、聞けばよかったのに…」

「あ!そうか!忘れてた!愛香、頭いいな!」


何でこんなに優しいんだろう。

私といる時、何でこんなに笑ってくれてるんだろう。

こんな私といて楽しいの?

イライラしないの?

退屈じゃないの?


健太が持ってきてくれたアイスティーを口にした瞬間、何だか涙が出そうになった。

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