《MUMEI》

「…健太、ありがとね」

「いーよ、いーよ、全然!」


健太に想いを寄せている女の子は、きっとたくさんいる。

その女の子達からしたら、私は羨ましくて仕方ないだろう。

席も隣で、メールも出来て電話も出来て。

こうやって笑いかけてくれて、こうやって会話が出来て。

なのに私は、可愛いげなくて。

…ちょっとは、素直になりたいのに。


「…てかさ」


またさっきのようにテンションを下げる健太。

健太を見ると、何だか切なそうな瞳でこっちを見ていた。

…何か、吸い込まれそう。

そう思ってしまうほど、健太の瞳は綺麗で。

こうやって見つめられることだって、きっと幸せなことで。

私達は、付き合ってはいないんだから。

付き合ってもいないのに、私は健太といれる時間が、ほんとに長い。

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