《MUMEI》
日が昇る
.
どれくらい泣いただろう。
泣き疲れた加奈子は、ふと天井を見上げた。
硝子張りの天井から見える空は、もう朝を向かえようとしていた。
「もうすぐ朝ね。」
ずっと二人の様子を黙って見ていた美雪が、漸く口を開いた。
「ドクターが言ってたわ。朝になれば悪魔は消えるって。」
「消える?」
どういう意味なのかと問い掛ける様、加奈子は後ろに立っている美雪を振り返り見た。
「さぁ…?それは見てみないと。」
しかし、美雪自身も聞いてないのか、肩を竦めながら首を傾げた。
「そう…」
もう一度空を見る。
太陽が昇りそうな空…
「何?なんか焦げ臭い…」
何かが焼けるような…
何処から臭って来るんだろう?
臭いの発生元を探そうと、鼻を利かせる。
「うわぁ!すご〜い!!」
美雪が歓声を上げたのと、加奈子の鼻が臭いの元を察知したのはほぼ同時。
「いや…何で…っ?」
それはリョウの身体からだった。
よく見ると、日光に当たった所からシュウーっと音をたて、白い煙を発生しているではないか。
「何、これ…。どういう事!?」
美雪に掴みかかったところで、答えは返って来ないと思っていた。
なのに…
「悪魔はね、太陽に当たると燃えちゃうんだって。ドクターが言ってたわ。」
酷く歪んだ笑顔の美雪が、目を輝かせていた。
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