《MUMEI》

もう今から怖くて一瞬だけ寒気がして、震えてしまった。

そんな私に気づいたのか、健太は私の顔を覗き込んでくる。


「寒いの?クーラーの温度下げてもらう?」

「ち、違うの…こ、こ、わ…」

「え?何?聞こえない」


嫌だよ、言いたくないよ!

ホラー映画観に行こうって誘っておいて、"ホラー駄目なんです"って意味不明じゃん!

恥ずかしいって…。

それにかっこわるいじゃん。

…でも、多分私はほとんど画面直視出来ない。

ガクガク震える。

…絶対にばれちゃうし、今正直に言っておこうかな…。


「こ…怖いの!私、ホラー苦手なの…!」

「……ええ!?だって誘ったの愛香じゃ…」


健太が言い終える前に、会場が暗くなりはじめる。

…無理、無理っ!

最初は一年後とか半年後にやる映画の宣伝。

そんな映像も、私の目にはもう入らない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫