《MUMEI》

馬鹿だなとかなんとか言うと思った。

だけど健太は決してそんなこと言わなかった。

むしろ、優しく呟いたの。


「俺が隣にいっから」


そう呟くと、健太は私の肩に手を回して体を包み込んでくれた。

そして、私の顔を健太は自分の方へと寄せてくれて。

…すごくあったかい。

なるべく画面が見えないようにもしてくれた。


さっきとは違う胸の高鳴り。

健太に絶対聞こえてる…。

こんなに健太に近いなんて…。

…可笑しくなってしまいそう。


時々、"大丈夫?"って聞いてくれる健太。


…気のせいかもしれないけど、健太の心臓の音も聞こえた。

ホラー、観てるからか、かな?


見上げると、健太の顔がすぐそこに。

視線に気づいた健太と目が合った。

"ドキ"って、分かりやすく胸が高鳴った。


「そんな見てると、ちゅーしちゃうよ?」

「…ふざけんなっ」


別にされてもいいかなって、一瞬思ってしまった。

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