《MUMEI》
証拠隠滅
「知って、たの…?」
「えぇ。」
当然とでも言うように、美雪はケロリと言う。
「何で…っ」
「何で教えてくれなかったのって?」
「そうよ!何で…さっきは知らないって!!」
「知らないなんて言ってないわ。ただ言わなかっただけよ。
だってそれ言っちゃったら、あんたアレを日の当たらない所に持ってったでしょう?」
そう言いながら美雪はリョウを指差した。
それにつられて加奈子も振り返り、リョウを見た。
完全に夜が明け、顔を見せた太陽がリョウの全身を照らし
リョウの身体は炎で包まれていた。
「いや…リョウ!リョウ!!」
加奈子は駆け寄り、自分の上着を脱ぐと、赤く燃え上がるその炎を消そうと、必死になった。
「お願い消えて!消えて!消えてぇ!!」
「ドクターも考えたわよねぇ。ちゃんと証拠隠滅するように仕掛けるなんて。」
「消えて!消えてよ!」
「アハハ!無理だってぇ。」
「黙れ!!」
美雪の笑う声が耳障りで大声で怒鳴る。しかし、笑い声は止まるどころか、次第に大きくなるばかり。
リョウを取り巻く炎と同じだった。
どんなに頑張っても消える事はなく、
炎が消えた頃には
リョウも消えていた。
灰も残らぬその場所は、ただ黒い焦げ跡になっているだけだった。
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