《MUMEI》

もう自分で可笑しくなってきちゃった。


「…愛香、それ本音?」

「…冗談よ、ばーか!」

「なんだよー!今めちゃくちゃ嬉しかったのに」


今日くらい、素直になりなよ、私。

健太、冗談なんかじゃないよ、本音だよ。

梨華子が近くじゃなくても、亜希が近くじゃなくても、私は楽しいよ。

隣に健太がいるだけで、私は普通に楽しい。

素直になれない自分にほんと腹立つ。


「俺、綺麗に花火見える場所知ってんだよ!ちょっと歩くけどいいか?」

「…ダルいけど…花火が綺麗に見えるならいいよ」

「よし、じゃあ、行くか!」


健太の手は大きい。

指は細長くて、手の甲はちょっとゴツゴツしてて。


…そして、温っかい。

"健太"って感じだね。

…なんか意味分からないこと言っちゃったな。

何だろ、"健太"って感じって。

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