《MUMEI》

「…なあ、愛香…」

「何よ」

「愛香、俺のこと嫌いか?」


…は?

あまりに唐突で、しかも健太らしくない質問に私は言葉が出なかった。


そしてこんなタイミングで…一発目の花火が、夜空に咲いた。


「俺ね、ぶっちゃけ、女なら誰でもいいと思ってたわけよ。
そんでさ、俺がちょっとでも言い寄ったり"可愛い"って言えば大抵の女子はその気になって、何でもやらせてくれた。
キスなんて挨拶みたいなもんでさ。何人もの女と普通にキスしてたよ」


花火を見ながら、健太は淡々と話す。

私は何故か、健太の方を見れなかった。


「でも…愛香は違ったよ。"ちゅーしてもいい?"って聞いて"はい?"なんて冷たい反応されたの、初めてだった。
…正直びっくりした。んで、悔しかった。俺に対してほんと冷たいし、それ以前に俺という男に興味なさそうだったし」

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