《MUMEI》

案内使は樹紀の手首をグッと引っ張った.

「あ…ちょっ」

「…後で追い付く.それまでソイツと一緒にいろ」

奴は、そう言って高くジャンプし、消えた.

「…アルも少々強くなったもんだ.」

案内使は二ヤリ…と微笑んだ.

「一体…―?」

「あぁ、アルから詳しく聞いておらんようだね….」

「…なにを?」

案内使は、ニコニコとして表情を変えない.
そういうところが少しムッとした.

「まぁ、ブラインの武器屋に聞けば分かるがの….」

そういって、一番奥のトイレに向かって行った.
樹紀も慌てて後を追う.

なんなんだよ…こいつら.
俺の知らない話ばっかしやがって….

「そう焦るな」

案内使が振り返って言った.

こ…こいつ人の心が…?

「そう、読める」

やはり、ここの人たちは何か変だ.

「人の心が読める…能力?」

「…さよう」

能力…ということは、シルバーの民では…?
奴の話で言うとだが.

「お前は、シルバーの民?」

「…さよう」

だから、シルバーについて詳しかったのか….
なるほどな.

「ここは一体?」

「ここは、シルバーの民とブラインの民が成人になったら人間界に己の力を試しに来る.
その時、シルバースブラインと人間界を行き来できる唯一の場所だ.
もちろん、力を試すだけではない.アルのように、人間界へ降りて能力の素質を持った子供を
シルバースブラインへ誘導する仕事の人もここを良く使う.」

出入り口みたいなものか….

「能力を持った人は、自分の力で行けないのか…?」

「行けない…と言うか禁じられていると言った方がいいだろうか.
自分の力では行けないと言うことではない.力の強いものでは行けるやつもいる.
しかし、それは禁じられている.」

なる…ほど.
人間界以外でも、法律みたいなものがあるのか.
まぁ、なかったらやってないけど.

「でも、いま喧嘩してるんだろ?その、シルバーとブライン.
ここにブラインが来たら気まずくならないの?」

「案内使に、戸籍は関係ない…」

「…そうか」



「では、行くぞ.」

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