《MUMEI》
 Story.7 : 屋上
"キスから始まる関係ってのも悪くないんじゃない?"

いつかそんなことを言われた気がする。

こいつ、ほんとに馬鹿なんじゃないかって思った。


だけど、私はそんな馬鹿を好きになった。

…そしてあの花火大会の日、私は呆気なくキスされた。


付き合ってもないのにキス。

あいつからしたら、全然普通のことなんだろう。

抵抗しなかった私も悪い。


あのあと、あいつは一言"ごめん"とだけ言った。

学校の前まで送ってくれたけど、私たちはずっと沈黙。


…私はどうすれば良かったんだろう。

健太のこと好きなんだから、"私も好き"って言えば良かったのに。

ほんとに…素直になれない私って…。


メールもしてない。

電話もこない。


健太らしくないじゃん。

"ちゅーしてもいい?"

笑いながらそう聞いてきてた馬鹿は、どこのどいつよ。

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