《MUMEI》

「あーいかちゃん」


いきなり頭上から、陽気な声が聞こえた。

…誰?

私が屋上に来たときは誰もいなかったはず。

しかも、もうすぐ次の授業始まるし…。


私は気になって顔を上げた。

そこにいたのは、山野彰。

…何か懐かしいな。

亜希と付き合い出してから、こいつ私には全く手出してこなくなったし。

夏休み中、彰とはあのお祭りでしか会ってないし。


「ちょっと隣座るねー」

「授業始まるけど」

「それ、そっくりそのまま愛香ちゃんに返すよ」

「…お隣りどうぞ」


私がそう言うと、彰は笑いながら私の隣に座った。

…香水のにおい、きっつ…。

そういえば、亜希が好きな香水だわ、これ。

彰はどんどん亜希色に染まってくなあ…。

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