《MUMEI》 ずっと沈黙だった。 何を話したらいいのか分からなくて。 隣を見れば健太が難しい表情をしていた。 …健太も分からないよね。 あの花火大会から、私たちはずっと言葉を交わさなかった。 "おはよう" お互いそれくらいだった。 「あの…さ…」 秋の肌寒い風がふく。 健太は私の方を見ずに、誰もいないグラウンドを見つめながら口を開いた。 「…俺…愛香のこと…好きになりすぎたみたいでさ…」 「………ん」 「キスしちまった瞬間、もう終わったと思った…彰に殴られたんだぜ、俺」 「へ…?」 そんなこと…彰からは聞いてない…。 「お前、馬鹿にも程があるって。本気で好きなら、そんぐらいで引くんじゃねぇって。そんなのお前らしくないって…」 「健太…」 前へ |次へ |
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