《MUMEI》 狭い一本道を渡るところで高そうなスポーツカーが結構なスピードで向かって来た。危ねぇ! 端に避ける。 「走るぞ。」 乙矢が強く手を握った。 勢いよくダッシュされて転びそうになる。 ちらりと後ろを向いたらスポーツカーが止まってそのまま後退して来た。 凄い速さで。 パパパァ! 脳天を貫く音量で警音器が鳴り響く。 「…………なあ、あれ由加里姉じゃないか?」 七生が叫んでいる。 「乙矢、観念しろ」 もう一方の手で乙矢を制止するとゆっくり振り向いた。あんなに速く走ったのに息切れ一つしていない。 由加里姉と乙矢はあんまり仲良くなかったんだっけ……。 由加里姉が高校生だった頃、乙矢が姉弟喧嘩でボコボコにされて病院送りになったんだ。今だとDVっていうのかな。由加里姉はヤンキー(死語?)だった、もうすっかり若妻なんだけれど……。 前へ |次へ |
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