《MUMEI》
―4―
「まっ、雛みたいなバレ方じゃないだけ、マシだろう?」

「雛にとっては何のダメージにもなっていないわよ。そもそも部のことだって、悲観していないんだから」

「確かにね。彼女にとってはどーでも良いことの一つだろうし」

そう言って笑みを浮かべる依琉を、神無月は複雑な表情で見つめた。

「…それも<視>えたの?」

「何でもかんでも<視>えるワケじゃないよ。雛の場合、<視>なくても分かるだろう? あの態度で」

「まっまあね。あのコは自分の能力に何のコンプレックスも持ってないから」

「けどそれは天性のものだと思うよ。彼女は人間として感情がある程度、欠落しているだろ?」

不意に声を落とし、依琉は真剣な表情になった。

「だから能力のことも何とも思わない…いや、思えない。感情も持てないものには、興味も持てないのと一緒さ」

「でも…感情の欠落は育ち方によるんじゃないの?」

「そうでもないよ。だって雛は元々生まれついてのお嬢様だ。何の不自由もなく、そして愛されて生きてきた。なのに感情の欠落がある。―それは残念ながら、彼女がそういう存在として生まれてしまったということだよ」

「…それは能力に関係無く?」
 

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