《MUMEI》
―12―
そう言って頭を下げた榊に、全員が慌てた。

「わっ分かりました!」

「分かりましたから、頭を上げてください!」

「ぶっ部長が悪いんじゃないよぉ」

「オレ達、分かっていますから! もう文句も愚痴も言いませんからやめてください!」

「あっ、そう?」

けろっとして顔を上げた榊を見て、全員ががっくり肩を落とした。
 
この変わり身の速さは一体…。

「じゃ、打ち合わせは以上で良いね? そろそろ早めの夕食にしようか。教頭がお寿司とってくれたから」

意気揚々と冷蔵庫に向かう榊の姿を見て、全員はぐったり疲れた表情になった。

「じゃあ私、お茶淹れるわね」

「オレも手伝いますよ」

「ボクはお皿の準備するよ」

「机、拭くわね。あっ、かんちゃん。テーブル拭き、どこぉ?」

「あっ、窓の外に干してる。取り込んでなかった」

全員がわらわらと動き出した。

そして豪華な夕食を済ませ、五人はイヤホンを付けて部室を出た。

時刻は19時。

既に校舎の中にはオカルト研究部の五人しかいない。

「―それじゃ、みんな。各自持ち場について。くれぐれも無茶は禁物だよ。何かあったら、イヤホンですぐに連絡。それか緊急避難所の部室に移動。決してムリはしないでくれ」

「しくじらないようにね」

「お互い様でしょう?」

「みんな、ケガなんてしないでね」

「…無事に明日を迎えられますように」

そして五人は、各々持ち場に散った。

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