《MUMEI》
一会
「……由加里姉どっか行っちゃった。」
七生は魚のようにぱっくり口を開けたままになった。


「そうかぁ、友達のトコかな。この荷物を美作家に運ぶのね?」
 ……エスパー太郎だ。


「持とうか?」
肩に自分の荷物と、両手に由加里姉の大型荷物を持って明らかに重たそうだ。
手を差し出して一つ鞄を受け取る。


「一つ頼む……こちとら企画書以上の重い物持ったことないから。」
 上手い……!



「今日来るって聞いてないよー。」
文句を言ってみた。


「ごめんごめん休み早めに取れたんだよ。美作家に厄介になるから……。乙矢も急に悪いね。」


「ああ、大丈夫。」
 ……乙矢、嘘つきだ。

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