《MUMEI》

うわっ!

いきなり止まりやがって、こいつ!

…免許とって何回目のバイクなのよ…。


「海じゃんかー!」

「は!?いつの間にかここまで来てたの!?」

「適当に来たらここまで」

「…帰れるんでしょうね」


私からちょっと目を逸らして笑う健太。

…こいつ…。

まあいっか。

私んち放任だから何時に帰っても何にも言われないし。

それに、健太が一緒だから別にいっか。


それにしても…夜の東京の海は大して綺麗じゃないなあ。

横浜だったら、観覧車とかあってまだいい感じの雰囲気なんだろうけどなあ…。


「夜に海って。冬に海って。何か不気味なんだけど」

「愛香怖いの苦手だったけ〜?」

「…海に落とすよ」

「愛香のこと引っ張る!」

「まだ死にたくないから〜」


くだらない会話をしながら、時々笑う私たち。

…やっぱり、健太と一緒なら普通に楽しい。

どこでも楽しくて、笑顔を見るとこっちまで笑顔になって。

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