《MUMEI》
自殺の真相
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学校を出たあと、憂に県立の図書館へ連れていかれた。

「前に一緒に見た動画の警備員とその妹が自殺したという記事が当時の新聞に載っているらしいの。サイトでの噂に過ぎないけれど、調べてみる価値はあると思う」

向かう途中、憂はそう説明した。
彼女のことだからいつものように怪しげなパソコンサイトで調べると言い出すと思ったのだが、新聞の記事ならある程度真実をもとに書かれているはずだ。俺は二つ返事で了承する。


県立図書館はこの地域では最も規模が大きく、他の図書館と比べて蔵書数も断然多い。常連である憂の話によれば、何でも最近システムをリニューアルしたらしく、どんなに昔の新聞の記事であっても最新式のコンピューターで検索・閲覧が可能なのだという。


図書館に入るとすぐに俺達は新聞の閲覧コーナーへ向かった。そのコーナーはフロアの一番奥にあり、保管されている新聞紙の他に、壁際にはズラリとたくさんの検索用のパソコンが並んでいる。
俺と憂は隣り合わせでパソコンデスクに座った。

「あの動画は確か1年くらい前のものだったわね…」

席につくなり、憂はひとりで呟きながら軽やかなタッチでパソコンのキーボードを叩き始める。

例のビルの名称に加え、『警備員』、『自殺』というキーワードを打ち込み、さらに地元の事件だからとこの地域の地方紙に絞った上で、検索ボタンをクリックした。

その隣で俺は彼女が操っているパソコンを黙って覗き込む。インターネットくらいは接続出来るが、彼女ほどこうした機械に明るくない。彼女みたいに美しいブラインドタッチは俺には到底真似できない。


やがてパソコン画面に幾つかヒットした記事がアップされる。憂は食い入るようにそれを眺め、ひとつひとつじっくりと確認している。

「これではないわ…これも違うし、次は…これもハズレね…」

かなり真剣な様子である。手持ちぶさたになった俺は、鞄から日本史のテキストを取り出してお復習した。《写り込む女》もヤバいがテストもヤバい。どちらにせよ悠長に過ごしている時間はないのだ。俺は憂をそっちのけで、テキストに目を通す。



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