《MUMEI》
空白の時間2
『アパートと学校の方は、お母さんがちゃんとしとくから心配しないで大丈夫、とにかく彩矢はゆっくり休んでなさい』



母が無理矢理作った笑顔で、そう言ったのは何ヵ月前だっけ?と彩矢は思う。


つい、この間のような気もするし、もう何年も前のような気もする。







彩矢は、近所でも評判な子供だった。
明るい性格に、恵まれた容姿。
周りの大人たちに可愛がられ、昔から輪の中心にいた。

尊敬できる両親がいて、将来の夢もあって、誰もが羨む生活を送っていた。





だが、今の彩矢は全くの別人になっていた。
もう、何ヵ月なのか何年なのか…それすらもわからないくらい人と会っていない。
会話もせず、食事もまともに取っていない。
綺麗だった栗色の髪は、ボサボサになり、艶もなくなっている。

その姿は、まるで廃人だった。
一日中、何をするわけでもなく、ただボーッとして気付くと眠っている…そんな状態が、ずっと続いていて、もう日にちや曜日の感覚もなくなっていた。

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