《MUMEI》 新境地車の後部座席に座らされた彩矢の隣に、英里が座り男は運転席に座った。 「さっき声出たねぇ?やればできるじゃない、すごいすごい」 英里が、まるで子供を褒めるように言った。 「桧山、説明しとけよ」 車のエンジンをかけると、男が言った。 「あ、そうね。これから彩矢ちゃんにルールを説明するね」 英里は微笑むと、ポケットからアイマスクを取り出した。 「その前に、これ着けさせてね〜、あ!別に怖くないからね?これも彩矢ちゃんを元に戻す為だから」 英里は半ば強引にアイマスクを装着させ、その上から布で覆いながら言った。 「ルールって言っても、そんな難しいことじゃないんだけどね?今から行くとこは彩矢ちゃんの新しいお家なの、彩矢ちゃんみたいな人が沢山いるのよ?」 彩矢の視界は完全に遮られ、闇一色になった。 「そこでは、みんなが家族なの、だから助け合って協力してね?」 疑問に思う点は、まだまだいくつもあったが、彩矢はゆっくり頷いた。 「あ、あと今運転してる人は霧島さん、みんな院長って呼んでるけどね?すごく頼りになる人だから困ったことがあったら相談するといいよ〜」 英里の話を聞きながら彩矢は、いつ帰れるんだろう、と考えていた。 霧島という男が「院長」と呼ばれているということは、見かねた両親が精神科にでも連絡したんだろうか、と。 「とにかく、な〜んにも心配することないからね?新しい家族と仲良くしてね?」 やたらと、 「家族」とか「助け合い」という言葉を、口にする英里が少し奇妙に思えたが、彩矢は何も言わず黙って話を聞いていた。 前へ |次へ |
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