《MUMEI》
新境地4
前を歩く霧島の後ろを、恐る恐る彩矢がついて行く。

建物の外に出て細い道を歩いて行くと、一軒の離れが目に入った。
離れの中に入って行く霧島の後を追っていいものか悩んでいると、霧島に「早く入れ」と促された。

院長室だという離れは、彩矢が案内された部屋とは違い、高級マンションの一室のような内装だった。
ただ、窓も少なく全体的に薄暗い様子は、彩矢の部屋と変わらないくらいで、異様な雰囲気を放っている。

「いいか?おまえは返事もできないただの玩具だ、俺の前で一切声出すなよ?」

ここで逆らえば返事をしろ、声を出せと言う霧島の姿が目に見えた彩矢は、小さく頷いた。

「声出したら、これだからな」

そう言って霧島はポケットから、一本の乗馬鞭を取り出すと、空を切って見せた。
そして、怯える彩矢を見て笑った。

「まず服を脱げ」

彩矢が戸惑いを隠せずにいると、鞭を持った霧島が近寄ってきた。
今さっき聞いた空を切る音から、鞭が自分の体に当たったときの痛さは、容易に想像できた。

その恐怖に堪えきれなくなり、部屋を飛び出そうと後ろを向いた瞬間、襟首を掴まれ、彩矢はその場に倒れ込んだ。

そして、その倒れ込んだ体に何度も鞭が振り下ろされた。

「……っう…ひ…ッ」

「玩具が逆らうな、玩具が意思なんか持つな」

「…ふ…ッ…ぅ」

鞭を振り下ろす手を止めても尚、うずくまって泣き続ける彩矢の頭を、霧島が踏みつける。

「服の上から叩かれただけでそんな泣いててどうすんだよ」

「…ぅ……ぅう…」

「わかってると思うが、ここにおまえの持ち物は一切ない。携帯も勿論、ここには外との通信手段は一切無いし禁止してる、建物の周りは柵で囲まれてる、ここから逃げ出すことは不可能なんだよ、この意味わかるな?」

霧島が不敵な笑みを浮かべる。

「これからは俺の為に生きろ」

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