《MUMEI》

 「お茶っ葉が無くなってます……」
翌日、日も傾き始めた夕方
この日も三原の姿は恋神神社の境内
其処にある社務所の縁側にあった
その三原をもてなそうと茶を淹れ掛けて、安堂は茶っぱが切れている事に気が付いた
「そっか。お昼におじいちゃんがきて、一緒にお茶飲んだんだった……」
すっかり忘れていた、と困った様な表情で
どうしたものか、と一人途方にくれ始める
「買いに行けば、いいんじゃねぇのか?」
至極単純な事だと言ってやれば
だがその考えは安堂荷は最初からなかったのか
さも良案と言わんばかりにその顔を輝かせていた
「……お買いもの、一緒に行ってくれますか?」
唐突な申し出だった
だが安堂が余りに嬉しそうな顔をするモノだから断るに断れなくなってしまう
「……ま、別にいいけど」
つい素気なく返し、三原はそのまま立ち上がる
今すぐに出掛けるか、と問うてやれば、安堂は慌てて支度をはじめていた
「ふ、服、着替えてきます!ちょっと待ってて下さい!」
「あわてなくて逃げたりせんから。ゆっくりやれよ」
頃ばれては困るから、と続けてやれば
安堂は恥ずかしそうに顔を伏せる
だが自覚は少なからずあるのか、すぐに頷いて返し落ち着いて身支度を始めていた
見慣れた巫女姿から私服のソレへと着替え終えた安堂
元々若いのだろうが、その姿は更に幼く井原の眼に映る
「……お待たせしました、です」
何故か照れている様子の安堂
三原と眼が合ってしまえば、柱の影へと隠れてしまい
その様に三原は苦笑に肩を落としてしまう
「そんな所に隠れてないで、行くぞ」
手を差し出してやれば、だが矢張り安堂からその手を取る事はなく
もどかしさも限界、井原は半ば強引に安堂の手を引いた
「あ、あの……!」
「何?」
何を慌てているのか、と何気なく問うてしまえば
安堂の視線がつながれたままの手に落ちる
つい無意識に取ってしまう手
だがその程度で照れてやれる程、三原は繊細になど出来ていない
全く構う事もなく、堂々と往来を歩いて行く
目的地は近所のスーパー
安堂の行きつけだという其処へと到着し
早々に目的のモノを探し始める
「あった」
慣れている手前、あっさりと目的のモノを見つけた安堂
だがすぐに、困った様な表情を三原へとして向けた
「……取れないです」
「は?」
行き成り何を言い出すのかと思えば
安堂は陳列棚の一番上を背伸びまでして指差した
「……コレか?」
丁度目線の処にあるソレを取ってやれば
少女は瞬間、あっけにとられた様な顔
茶っ葉を受け取りながら、三原をまじまじと眺め見る
「どうかしたか?」
「倖君は大きいです。ちょっと、羨ましい」
「そうか?」
「私が、もう少し大きかったらよかったのに」
「そうか?丁度いい大きさだと思うけど」
頭をつい無意識に撫でてやれば
安堂は恥ずかしいのか、顔を俯かせてしまう
見てみれば、耳まで真っ赤で
その初々しい反応に、三原も釣られて照れてしまっていた
「買い物、これだけか?」
互いに無言な事に耐え兼ね
照れ隠しに慌てて訊ねてみれば、安堂は頷いて
だが最中に、何かを思い出したかの様にあっという声を上げた
何事か、問うてみれば
「……お茶菓子も、欲しい、です」
菓子売り場の方を指差していた
幼子の様なその表情に、三原は僅かに笑みを浮かべると
その希望どおりに菓子売り場へ
「これと、これ。あとは……」
様々ある菓子を取っ換え引っ換え見ながら
だが中々決められずにいる安堂
唸り声まで上げ始めてしまった様に、三原は苦笑に肩を揺らしながら
「……俺はこれ、好きだけど」
柿の種をカゴの中へと入れてやっていた
突然のそれに、安堂は瞬間驚いた様な表情をしてみせたが
三原の気遣いに気付いたのか、満面の笑みを浮かべて見せる
それから二人で話をしながら様々な菓子を選んではカゴの中へ
精算をしにレジへと向かい、財布を出そうとしていた安堂を三原が止める
「?」

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