《MUMEI》
取り扱い説明書3
「図星か?」

変態なんじゃない、興奮なんてしてない、そう言いたいのに上手く声にならない。

「毛も生えてんだか生えてないんだかわかんねぇな…色も…大した経験なさそうだな…」

彩矢は処女だという意味も含め、首を振った。


実際、異性から告白されたことは何度かあったが、付き合うまでには至らなかった。
異性との付き合いなんて、彩矢には想像ができなかった。
それに、恋愛より友人と遊ぶ方が大切だった。

恋愛より友情を優先し続けた結果、周りの友人たちは経験を済ませ、彩矢は気付けば二十歳を過ぎていた。

今更、処女だなんて言いづらくて、経験のあるふりをしてきていたが、今はプライドより自分の身を守らなきゃ、と思った彩矢は声にならないなりに、霧島に処女であることを訴えた。

こんな形で経験したくない、と。


だが、どんなに必死に訴えても、無言の訴えでは霧島に届く筈もなく、霧島は不気味な笑みを浮かべると、男性器を思わせる太く長い、黒光りした道具を彩矢の前につき出した。

「……ゃ…」

彩矢の口から、小さな声が出た。
それに気付いた霧島が笑う。

「叫び声しか出ないと思ったんだけどな…叫ばなくても声が出せたか」

「…ゃ……ゃめ…」

そこまで言ったところで、霧島の平手打ちが飛んできた。

「言っただろ?玩具が意思を持つな」

そこからは、何が起きたかわからなかった。
とにかく逃げ出さなきゃ、そう思って霧島の隙をついてベッドから立ち上がった筈なのに、一瞬息が止まり、側頭部と肩に鈍痛が走り、視界が白くなったと思った次の瞬間、下腹部に激痛が走った。

「いやあぁぁああぁッ!!!!」

上を向くと、霧島が笑っていた。

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