《MUMEI》 開幕「レイ先輩!!」 白を基調とした僧服を身にまとった小柄な女性が階段を登りきりレイの側へと駆け寄る。 「アイズ、この二人の手当てをお願い。」 倒れている式夜とリースを示す。 一応出血は止めたものの、二人は依然として危険な状態である。 慌てた様子で医療品を取り出し、次々と治療を行なっていくアイズ。 「レイ先輩、こっちのヒトに治癒術式を展開してください、少しでも傷を抑えないと・・」 両手に複数の治癒術式を展開しながらレイに指示を出すアイズ。 「えぇ。」 静かに頷くと、一度、割れた窓を見た後治癒術式を起動させた。 教会を出発し、リーベルの街を一周して教会の聖殿に入る。 それが結界強化儀式の始まり。人々の多くは街頭に出て枢機卿、数十名の守護騎士達の行進を祝福する。 先日のセレト洞窟の事件で守護騎士の人数は400名から300名ほどに減っていたため、守護騎士以外のフィリアス教徒も警備任務についている。 「ふぁ〜〜・・暇だ〜〜!!警備なんてつまらない〜」 周辺警戒のため、見通しの良い建物の中で外を見ながらぼやくエミ。 ジュレイドは生真面目に双眼鏡を使って、街を見ている。 「はぁ・・レイは帰ってこないしさ〜・・見に行った方が良いと思わない?」 「問題があればこっちに何かしらの合図を送るはずだろ。何も無いって事は問題が無かったって事だ。」 エミには見向きもせずに警戒を続ける。 先ほどあった強い魔力の収束の原因を確認するためレイとアイズがココを出て十数分。 エミが確認に行く!!と張り切っていたのを遮るようにレイが独断で向かってしまって、急遽アイズを追わせた形になった。 「・・・けどさ〜強い魔力の収束だったし、救援を呼べないくらいにピンチとか〜」 双眼鏡をポイっと投げて壁にもたれて座るエミ。ジッとしているのが不満なのが良くわかる。 「今は戦闘を起こしているような魔力の状態じゃない。派手な戦闘になれば一発でわかる。」 視線は街を行進している枢機卿達を捕らえている。 「あ〜ぁ・・最悪、何だってこんな役なんだろ。」 呟くエミはガサガサとお菓子を漁っている。 (・・・そろそろか。) 枢機卿達が街の中央の公園に入ったのを確認して心中で頷く。 「で、ジュレイド、君はいつ私に攻撃してくるのかな?」 背後のエミがなんでもない事のようにジュレイドに声をかける。相変わらずお菓子を漁りながら。 「・・・なにを言い出すかと思えば。暇つぶしの冗談にしては最低だな。」 「ふ〜ん・・じゃあどうしてレイの後をアイズに追わせたの?あの子は防衛能力がすごく高い。レイみたいに広範囲戦闘をするタイプと組ませるには不向きなんだよねぇ〜・・私みたいに遠距離主体なタイプとは相性が良いんだけど・・」 お菓子をパクパクと食べながら、言葉を続けていく。 「・・いつもは冷静で何を考えてるのか解らないレイでも独断で動く事がある。さっき収束されたタイプの魔力を感知したトキ。本人は気がついてないけど・・君は知っていたよね?」 お菓子を食べるのをやめ、静かに立ち上がるエミ。 「・・・全部お見通しって訳か?」 振り返ったジュレイドの表情は普段と変わらない。 「どうだろ?君がコーリア教のヒト達と会って話をしてたのは知ってるけど。」 「・・・お前を殺す。」 どうでもいい事のように語るジュレイド。 「そっか、黙って殺される気は無いし、抵抗させてもらうよ。」 ガン!! ジュレイドがこちらに向かって投げつけた双眼鏡を撃ち落す。 「遅い!!」 声に反応するように首を左へと傾け、回避。 ドゴン!! つい先ほどまで自分の頭が有った場所にジュレイドの拳が通過し、壁を強打、破砕する。 「八ズレ!!」 壁を蹴り、跳躍。天井をさらに蹴り魔導銃をジュレイド目掛け乱射する。 ガンガンガンガンガンガンガンガン!! キンキンキンキンキンキンキンキン!! ジュレイドが両腕のガントレットで銃弾を撃ち落していく。 「この程度か。」 本来なら爆発するはずの銃弾は爆発することなく床に転がる。 前へ |次へ |
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