《MUMEI》

「健太…」

「ん?」


私の上で、健太が優しく笑う。

ちょっと眉を上にあげる、健太のこんな笑い方が好きなんだ。

優しくて大きな瞳が、ちょっと細くなるの。


「…やっぱり何でもないわ…」

「は?言えよ〜」

「何でもないってば!」

「二人っきりじゃねーか!」


"好き"

そんなストレートに言えるわけない。

こんな健太の真っすぐな瞳に見つめられたら。

何よりも、健太の瞳が好きなんだよ、私は。

…いつからなんだろ。

こんな風になっちゃったの。


「ほんとに愛香って…好きとか言わないよなあ…最初の一回だけじゃん」

「いいじゃん、貴重で」

「…でも、声は出ちゃうもんなっ?」

「馬鹿!…んっ…」


年明け早々…カラオケで何してんだ、私たちは。

こんな年明け初めてだよ。

…こんなドキドキすんのも、健太が初めてで。

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