《MUMEI》

僕は今、イジメにあっている。




イジメの原因…。

そんなのわかってたら、苦労はしない。
けど、ひとつだけ思い当たるのは、僕の外見。




僕は小さい頃から、よく女の子と間違えられていた。
戸村 眞季(トムラ マキ)なんていう名前のせいもあるけど、167pから伸びる気配のない身長じゃ、今時の背の高い女の子たちと大差ない。
それに僕の体は細身……。

いや…素直に華奢だと言った方が、いいんだろうか……。


高校生になった今も髭が生えてないみたいに薄いし、体毛も他の同年代の男子に比べて少ない。
多分、女の子にしては毛深いっていう女子と同じくらいじゃないだろうか。


髪を短くして男らしい服装をしたって、ボーイッシュな女の子だと思われてきた。


そんな僕だから、子供の頃から“眞季ちゃん”なんて呼ばれて、よくからかわれていた。



でも僕はいくらいじめられたって、からかわれたって全然平気だった。


正直、泣いた日もあった。
けど僕にはいつも味方がいた。



いつも僕を庇ってくれる女の子…。

名前は、今森 陽菜(イマモリ ヒナ)。

僕の幼馴染みだ。

陽菜は幼馴染みでもあり、僕の初恋の相手でもある。



陽菜は背が高くて、折れてしまいそうなくらい細いその身体は、当たり前だけど僕より華奢で、近所でも可愛いと評判の女の子だった。
透き通るような白い肌、筋の通った鼻。
絹のような漆黒の髪、髪と同じように黒くて大きな瞳は羽のような睫毛で飾られていて、あまり見つめていると吸い込まれてしまいそうだった。

そんな陽菜の周りには、いつも誰かがいて楽しそうに見えた。

いつも独りの僕と正反対の陽菜は、いつもキラキラして見えて、別の世界の人間のようだった。
僕は初めて陽菜を見たときの衝撃を、忘れない。



神様ってやつは、なんて綺麗な物を創り上げたんだろう…。



そう思った。

綺麗な横顔に、どれだけ見とれただろう。
ぷっくりとした桜色の唇に、何度触れたいと思っただろう。



僕の憧れ…。
この気持ちを伝えられる日なんてこないだろうけど、僕は今も昔もずっと陽菜が大好きなんだ……。

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