《MUMEI》 友達肉体的ないじめなら、今までにされてきたことの方が辛かった。 でも、好きな子に… 理解してくれてると思って信じてた子にだけは、女扱いされたくなかった。 陽菜だけは、僕の気持ちを理解してくれてると思ってたんだ。 ずっと僕の傍にいて、僕の味方でいてくれてたから。 なのに女装させるなんて……。 僕は凄く辛かった。 “裏切り”とも呼べるその行為は、殴られたり蹴られたり、空気のように扱われるイジメより、ずっと辛かった。 一言「嫌だ」と言えば、こんな思いしなくて済んだのかも知れない。 けど僕が陽菜に、そんなこと言える訳なかった。 だって、嫌われたくないから…。 もし僕が陽菜の命令に逆らって、陽菜を怒らして、口もきいてくれなくなったら……。 そう考えたら、女装させられて登校した方がマシだ。 それに、秘密を共有してると思えば、女装も楽しめる。 だから僕は、このままでいい。 陽菜が僕といてくれればいいんだ……。 もともと友達なんていなかったけど、男だということがバレないように学校では極力、人と話さないようにしていた僕には、入学して半年が過ぎても、友達はできなかった。 高校デビューなんて話よく聞くけど、陽菜がいるんだから友達なんか必要ないし、求めてもいない。 そんなふうに思っていたのに“友達”は急にできた。 友達……? いや…、僕は別に友達だなんて、思ってないけど…。 その子と出会ったのは、二日前。 その子は放課後の教室で、独り泣いていた。 前へ |次へ |
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