《MUMEI》













「あ―クソッあの中津め」













授業中に居眠りしたというペナルティで数学のプリントの山を持っていくように頼まれた花笑は多少キレ気味で廊下を歩く。


今は放課後で生徒はとっくに下校していた





それがまた花笑を腹立たさせる

なんで自分だけ、たかだか居眠りしただけ、しかもあの中津なんかのために…






イライライライラ…………









目の前は運ぶプリントの山で視界がさえぎられフラフラフラフラ、一直線に足が進まない。













「ったく、帰ってすること沢山あんのに、しかも第2教室とかここからめちゃくちゃ遠いいだろ…あの先公ォ」










第2教室に向かうには二階に上がらないとならない。今は一階、とゆうことはその間に階段とゆう難関がある。立ち止まりため息をはいた















「ここ…上がるのか……」











見上げるといつもより高くそびえるように見える非情な階段、

あしたは筋肉痛かなとか頭の隅っこで考える





とにかく、とにかくここを突破しなければ帰れない。意を決し覚悟を決めた。


ここは勢いだ!勢いだけがものをいう!










「セイッ!!」











裏声になりつつ声を出しかけ上がった







「オオオオオ!」













半分をかけ上がり踊り場で休憩、





「ゼー…ゼーハー………歳かな、ゼー」














プリントを崩さないように息を切らす。


息を整えてからまたかけ声を出しながらかけ上がる………………しかし、





グラッ










「――――――え…?」













最後の最後、バランスを崩し身体が浮游感に包まれた








―――――やば、転け………









目を瞑り衝撃を待つしかなかった。

………けれど、










「??」














痛みはこない。なんで?
頭が混乱するなか花笑の頭上から












「ありがとうって言葉はないのかな?」













ニコリともしない人物、









「……東堂…千尋……」

「なんで知ってんの、つか呼び捨て?図々しいね君」







しまった、と思い目を見開く。ついつい葵たちが行っていた人物の名前を口にしてしまった。














「や、あの友達が言ってたんで…」

「いや、君の友達自体知らないんだけど」

「有名だからじゃなの?」

「僕が?」

「だから名前ぐらい知られてて当然てゆうか何てゆうか……まぁ、あたしは今日知ったけど」

「面識のない人間に知られてるってなんか不快だね」

「…………………?」










よくわからないなこの人、



千尋の言葉はひとつひとつが花笑にはわからなかった。こうゆう考えを隠す人間に会ったことがなかったから…


















「ボーっとしてないでさっさと自力で立ってよ。支える身にもなって」

「あ、ごめん」












パッ、と千尋から離れる


とっさに謝ったが、なんだか遠回しに重いと言われた感じがして腑におちない。















「プリント」

「あ、ごめん」











また謝ってしまった。
まぁ、散らばってしまったプリントを拾ってくれてるんだからここはいいのか、





無表情のまま花笑が両手で持っているプリントの山の上にそっと乗せる。













「ここはさ、謝るとこじゃなくお礼を言うとこじゃない?」








違う?と、首を傾げる。

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