《MUMEI》










「あり…がと」









なんだか恥ずかしくて俯き加減でお礼をいった

声も小さかったし言葉につまずいてしまったがちゃんと聞こえただろうか……





確かめるように千尋の顔を見たら、お礼を求めてきた本人はどうでもよさそうに視線を合わせず

「そう言えばさ―」と、いきなり話題を変えてきた。









……………………この野郎ォ…!






その態度に怒りがうまれてくる















「君、髪長いよね、質もいいし。よく褒められない?」

「え………いや、まぁたまに…」

「ふーん…」










あたし髪にの手を伸ばし毛先を触る

なんなんだこいつはッ!




全てにおいていきなり過ぎて理解に苦しむ。もしかして女ったらしか!?とか思考を巡らせたが多分違う。もしそうならあの時の告白をOKしていただろうし………




怪しむ花笑、未だ髪をいじくる千尋、


感情を感じない感覚。そんな雰囲気を纏わせていた千尋が一言、

















「長くて綺麗な髪、誘惑しているみたいなそんな髪を見てるとね、何故か無性に……







切りたくなるんだ。」










ゾクリ。













背筋が一気に冷えていくのがわかった。

初めて見た千尋の笑顔に冷や汗が滲む


冷たく、「殺すよ?」と言われた感覚、















「大丈夫。実行したりなんかしないよ、ただ嫌いなんだよね長い髪……」







花笑の髪からパッ、と手を放した














「本当に嫌いなんだ、女が」

「…………あれ?何で知ってんの?」

「あの時、告白された時最後に言ってたじゃん」

「……………あぁ〜…そうだっけ」




空笑いをこぼし頭を掻いた千尋












「ま、どうでもいいけど僕、教務室に用があるからもう転けないようにね……………山田花子」

「!!」












ズボンに手を突っ込みトントンと階段を降りていく、花笑は最後の言葉に反応して千尋の後ろ姿に大声で





「あたしは山田花子じゃねぇ―――!!!」










と、叫んだ。

千尋は聞こえたのかどうなのか知らないが飄々とした態度で花笑の言葉に反応しなかった


















▽▼










ガチャ……







「ただいま〜」








やっと帰宅、時計に目をやるとまもなく夕方の17時。もう一度言います時刻はまもなく夕方の17時。





プリント第2教室に運んで、ダッシュで教室に向かい鞄をさげて、近所のスーパーに駆け込み特売の品買って、そしてこの時間…


あたしの計算が狂った




中津にパシられる時点で狂ったが、特に、特に狂わされたのがアイツ………東堂千尋だ。





助けてもらっただろって?
知ってるよ。

でもあの時が一番時間をくってしまった





今からあたしは

炊事、洗濯、風呂沸かし、
いっぱい…いっぱいあるんだ。










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