《MUMEI》
銃VS拳
「こっちの銃弾の魔力を喰ったって訳か。あ〜も〜!!相変わらず嫌な機能。」
ジュレイドの両腕を肘の辺りまで覆うガントレットには対魔法防御として魔力をガントレット内に溜め込むことができる。彩詩が持つ夜霧と同じタイプの能力(機能)であるが、相手の魔力波動に合わせて発動させなければ意味をなさないため扱いが難しいタイプの能力(機能)である。
もちろん溜め込んだ魔力を放出すれば、攻撃にも利用できる。
エミとジュレイドの距離は5メートルほど、その距離を無視して拳を振るう。
合わせるようにエミは魔導銃を撃つ。
ガンガンガン!!
ド!
ド!
ド!
空中で爆炎が起こる。
「ふ〜・・本気みたいだね。残念、ちょっとは仲良くなれたかな〜とか思ってたのに。」
「俺は今の偽善に満ちた平和が許せない。この街を崩壊させて、戦争を起こし、もう一度・・本当に正しい平和を築く。」
決意に満ちた眼をエミに向けるジュレイド。
「・・・それが事実なら私はお前を殺すよ。この平和は、ロゼが必死に作り上げたモノだから。」
「もう遅い。今更、止められやしねぇよ。」
小さく息を吐くと、もう一丁の魔導銃を取り出し右手に構えるエミ。
「飛散華(トビサンカ)エミ・シューゲル。せめて我が華を抱き冥府に去りなさい。」
いつもの陽気な笑顔が消え、無表情に言い放つ。
「マジな顔もできるんだな。だけどよアンタじゃ俺は殺せな」
「遺言を言わせる気は無い。」
即座に上げたガードの上から痛烈な蹴撃。
「舐めるな!接近戦なら俺の」
襲い掛かる蹴りを片手で受け止め、エミの脚を叩き折ろうと力を入れるが・・
ガンガンガン!
放たれる至近距離での弾丸。
キンキン!!
二発は弾くが一発が頬を掠め血がにじむ。
そのまま体勢を低くしエミが居る辺りに地面スレスレの蹴りを放つジュレイド。
ガ!
「ちッ!」
エミの脚に直撃し、エミの体勢が崩れ右側に傾ぎそのまま倒れていく。
「は!!」
叩きつけるように拳を振りぬく。
ドゴン!
キン・・
床が砕け、飛び散るがエミの体を打撃した手ごたえが無い。
「これで終わり。」
首を狙った拳は狙いを逸れ、床を破壊しているだけ、右手の魔導銃から放たれた弾丸で拳を反したが、首の周辺には傷が生まれ、血が流れている。
無表情のまま、銃の引き金を引くエミ。
ガン!!
放たれた弾丸が正確にジュレイドの額を撃ち抜く。
ドシャ・・
倒れたジュレイドをそのままに立ち上がり、静かに魔導銃をしまう。
「・・・嫌な仕事だよ。」
小さく呟くエミ。
「だったらココで死ねばいいだろ?」
ゴス!
「ぇ・・」
腹部に深々と突き刺さった拳。
頭を撃ち抜いたはずのジュレイドが起き上がり、前のめりに倒れそうになったエミを支えている。
ガシュン・・
金属音、エミの体を金属の杭が貫通する。
「じゃあな。」
ドカン!!
ガントレットに溜まっていた全ての魔力を解き放ちながら杭をガントレットから発射、エミの体を壁へと縫いとめる。
ジュレイドのガントレットには魔力吸収、放出以外に、形状の変化といった機能(能力)も付いている。
本来なら金属鎧などを貫通するために付加された機能(能力)でエミのような僧服は容易く貫通する。
「言っただろ、アンタの銃じゃ俺は殺せないってよ。」
縫いとめられたエミを見るジュレイドの眼は何の感情も浮かべておらず機械のような冷たさだけがあった。

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