《MUMEI》
ターゲット
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―――日曜日。


俺は憂と待ち合わせした駅前のファストフード店へ向かった。
休日の昼過ぎということもあり、店内は高校生らしき若者のグループで賑わっているようだ。

店の入り口で待っているとじきに憂がやって来た。夏も盛りだというのに、彼女は黒いブラウスとスカートを着ていた。彼女の私服姿を見るのはこれが初めてだ。比較的かなり地味な格好だが、そのシンプルな服装は不思議と彼女の魔術的な雰囲気をより一層引き立てていた。

「呼び出して悪い」

俺が謝ると憂はニコリともせず、首を横に振った。

「構わないわ、ちょうどわたしもあなたに伝えたいことがあったの」

伝えたいこと?

ちょっと嫌な予感がしたが立ち話も何なので俺達は並んで店内に入り、それぞれ飲み物を買うとイートインスペースに腰を降ろした。

「ところで、確認したいことって何かしら?」

飲み物に口をつける前に彼女は言った。俺はコーラを一口飲んでからゆっくり口を開く。

「君は《写り込む女》の姿を見ていないって言ってたよね?」

憂は頷く。

「ええ、そうよ」

「いつから?」

「最初からよ。正確にはあの動画を見てからね」

なるほど、と呟いてから俺は再び切り出す。

「動画の中の女は見えたんだよな?」

憂はうんざりしたような顔で、当たり前じゃない、と答えた。

「あれが見えてなければわざわざあなたに報告しないわ」

なるほど、と俺はもう一度呟いた。ここまでは俺の推測通りである。

では、一体なぜ、その後彼女は女の姿を見えなくなったのか。やはりセンスの問題か。

考えをまとめていると、憂がつまらなそうに鼻を鳴らした。

「あなたは女の姿を見たと得意気に話しているけれど、わたしには全然わからない。だから悔しくて調べてみたの。わたしと同じように女が見えないひとがいるんじゃないかと思ってね」

別に得意気に話した記憶はないのだが…と言い返そうと思ったが、憂は携帯をバッグから取り出していじり始めた。

「あの動画に関するレビューを検索してみたの。そうしたら興味深い書き込みがあったわ」

読んでみて、と自分の携帯を差し出す。彼女のせいであの動画を見るはめになったこともあり、俺は警戒しながらそれを受け取ると恐る恐る画面を覗いた。

そこにはたくさんの人びとの書き込みがアップされていた。あの動画に関する感想のようなものらしく、《ちょー怖いっ!》やら《マジでヤバイです》やらの文言がズラリと並んでいる。



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