《MUMEI》

だからわたしは彼が好き。

けど彼は…本当にわたしが好きなんだろうか?

いつも冷静で、感情を取り乱したりしない。

どこへ行っても、何をしても、感情や表情が動いているのはわたしだけの気がする。

なので顔を上げ、至近距離で彼の眼を見つめる。

「ねぇ、わたしのこと、本当に好き?」

「好きだよ」

…やっぱり淡々と返された。

「それは…ちゃんと恋人としての、好き?」

「じゃなきゃ、恋人にならない」

ごもっとも。

おかしなことを言っているのは、絶対にわたしの方だって分かっているのに…。

「どうした? 何か不安なのか?」

「う〜ん。…いや、わたしの方がおかしいのよ。幸せすぎて、不安っていう感じ?」

そうだ。コレは幸せ過ぎるから、感じてしまうこと。

だって彼はわたし一筋だし、周囲の人だって祝福してくれる。

大事にされていることだって分かるんだけど…。

「ねっ、ねぇ。イヤなことはイヤって言ってよ?」

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