《MUMEI》 母の形見である、真珠の首飾りも、フイリプは人魚の水槽に投げ入れた。 首飾りは、妻の手に渡っていたものを、化粧台から盗み出した。 丸く、連になった真珠を、ばらし、一個ずつ水に沈めてゆく。 白肌が、より光沢をましたように錯覚した。 真珠を散らすことで、自身の美的感覚を、水槽の中で凝縮させるのだ。 磨きあげるように、美しいものだけをフイリプは掻き集めた。 時折、人魚がフイリプに向かって、微笑みかける。 前へ |次へ |
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