《MUMEI》

母の形見である、真珠の首飾りも、フイリプは人魚の水槽に投げ入れた。

首飾りは、妻の手に渡っていたものを、化粧台から盗み出した。

丸く、連になった真珠を、ばらし、一個ずつ水に沈めてゆく。

白肌が、より光沢をましたように錯覚した。

真珠を散らすことで、自身の美的感覚を、水槽の中で凝縮させるのだ。

磨きあげるように、美しいものだけをフイリプは掻き集めた。

時折、人魚がフイリプに向かって、微笑みかける。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫