《MUMEI》
下校
「もう明日から夏休みだね!!」

「早いわよねぇ」

「宿題多いなオイ!!」

「大丈夫。終わるよ」

昼近くの太陽の下、今宵、秋葉、紘、歩雪は帰り道を並んで歩いていた。

今日は終業式で午前授業だった為だ。

「今学期もいろいろあったよなぁ」

「まぁね」

紘と秋葉はなんだかんだいって仲がよく、一緒にいる機会が多くなっていた。

ホントに、いろいろあったなぁ・・・・・・。

秋葉や琴吹くん達に話を聞いてもらったり、助けてもらったり。

それに・・・・・・。

今宵はチラッと歩雪の横顔を覗く。

この視線に気がついた歩雪は、今宵の方を向いた。

「何?」

「な、何でも無いよ!!」

「変なの」

歩雪はクスッと笑うと、また前を向いて歩く。

あ、危ない・・・・・・!!

ていうか心臓に悪い!!

今宵は赤い顔を隠すように俯いた。

だってかなり前に言われたことが気になってしょうがないんだもん!!

『ずっと捕まえてるから』という意味深な言葉を今宵に残した張本人が、そのことに触れてこないのだ。

それから今宵の頭の中にはその言葉がグルグルとメリーゴーランドよろしく回っていて、歩雪と話すときにどうしても思い出してしまっていた。

歩雪はその今宵の反応を見て、先ほどのように笑っているのだが。

「なぁなぁ!!また皆でどっか行こーぜ!!」

突然紘が3人に提案した。

「どこによ?」

「うーん・・・・・・。秋葉はどっか行きたいとこねーの?」

「別に無いわよ」

「冷た!!」

秋葉は紘の提案をスパッと切る。

これに負けじと紘は今宵に振った。

「今宵は?どっか行きたいとこある?」

「・・・・・・。特にないかな!!」

「うわ酷!!今宵まで!!」

今宵はうなだれる紘を見て笑っていたが、心にはある場所が浮かんでいた。

あの場所に今年も行かなきゃね。

皆で行くわけには行かないけど・・・・・・。

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