貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
伝言。
アキが紙袋を持ち直し、「じゃあ、行こっか?」と云った。

わたしは「うん」と云いかけて、ふとやらなきゃいけないことを思い出した。


「ちょっとだけ待ってて?一回だけメールさせて欲しいんだけど」

「いいけど、誰に?」

わたしは、急に行方不明になると親が捜索願なんかを出しかねないから、それを阻止するために弟に連絡しときたい、と伝えた。

「あー、家出するって宣言しちゃうんだ」

「…うん。犯行声明」

「あはっ、あんたも随分意地悪になったねぇ」


携帯を取り出し、メールを打ち始める。


『ウチの空気は不味いから、しばらく息抜き出来るところに行って来る。
たまに近況報告くらいはするから、心配しないでって代わりに伝えておいて。』


無機質だけど、少しトゲのある文章。
アキに画面を見せてから、送信する。



「あんた…、相当染まって来たよね」

「何のことー?」



さっきまでのアキに対する疑念は晴れ、二人で笑い合いながら馴染みの喫茶店を後にした。

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