《MUMEI》

「キスしようと思ったのにー」

「馬鹿か、お前は」

「あ、愛香ちゃん、ちょっと一緒に自販行こうよ。喉渇いてきちゃったわ」

「一人で行きなよ」

「ジュースおごってやるから」

「…仕方ないな…」


…私もなんて簡単な奴。

人のこと言えないわ。


てか、今LHR中なんだけどね。

一応授業中なんだけどね。


意外と普通に教室を抜け出して、自販へと向かう。

…担任、緩すぎ。


「あれ?」

「何、どうしたの、拓也」

「…あれって…矢崎と…安倍…」


…え?


拓也が指差したのは、ちょうど見える体育館裏。


まさか、と思い私も体育館裏の方へ視線を移す。

そこには確かに、安倍莉奈と…健太の姿が。


…何で?今授業中じゃん。

私も人のこと言えないけど…。

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