《MUMEI》













「お姉ちゃん」

「??、何?」











下から小さな声がした。向くと小学4年の弟、亜紀がちょこんと立っていた。

可愛らしい弟、ついつい甘やかしてしまうのがあたしの悪いクセ










「今日青兄帰って来ないって」

「はぁ!?また??」

「うん、彼女と遊ぶって」










呆れた。最近アイツ夜遊びし過ぎだ
ちょっとやきいれるか

……………逆にやられるか。












「困ったお兄ちゃんだね亜紀」

「ほんとだよ」









二人してため息

すると玄関のほうからドアの開く軋んだ音が聞こえてきた。亜紀は駆け足で走っていき「おかえり―!」と叫ぶ。


お父さんが帰ってきたのだ












「おかえりお父さん」









手拭きで濡れた手を拭きながら亜紀同様玄関に向かう。お父さんは作業着姿で靴を脱いでいた







「おう!ただいま〜。腹減った〜」

「今支度してる」

「あり?いつもより遅いな」

「……………いろいろあってね」

「そうか〜、よし!じゃあ今日は久々にお父さんが手料理を振る舞って………「「やめて下さい」」

「…………え?」










なんで?とゆう顔であたしたちを見る。









「お父さんの料理って料理と呼べる代物じゃないから、台所が科学薬品研究所みたいになるから」

「えぇ!?」










あたしの言葉に深く頷く亜紀、そりゃそうだろ

お母さんが死んでから苦労したよ。
料理のりの字も知らないお父さんは何か料理を履き違えてて、あたしたち姉弟は何回も死にかけた。

毒でも入ってんの?わざと?
なんて子供ながらに実父を疑った






この歳ではまだ死にたくない!
と、あたしは生きるために死にもの狂いで料理を身につけた。

別に作ることに関して嫌いじゃなかったしむしろ自分の食べたいものが作れたのでその点では良かった。



…………だが、食に卑しいあたし、
味見と言いつつ食べてしまうので気を張ってないといつの間にか具材はもぬけの殻。

何度弟の青葉に怒鳴られたことか…

















「お父さん、晩御飯の支度はあたしがやるから風呂沸かしてきて」

「はいよ〜」

「僕はぁ?」











亜紀はあたしのスカートの裾をクイクイと引っ張り仕事を要求


あぁん!可愛いわァ
今あたし無表情だけど内心すごくハイテンションだから










「亜紀はお父さんがちゃんとしてるか見張ってて」

「はい―」

「え、それ必要?」

「もちろん」
















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