《MUMEI》
犬は・・ちょっと・・
「大丈夫ですか?」
一通りの治療を終え、声をかけるアイズ。
「・・・はい。」
答える式夜の声は小さく覇気が無い。
「アイズ、私はエミの所に戻るわ。二人を医療機関まで送ってから貴女は戻って来て。」
それだけ言うと静かに歩き去っていくレイ。
「了解です、なるべく早く戻りますね。」
リースの怪我の状態を確認して、安心したのか笑顔で応じるアイズ。
「式夜さん、ココから一番近い病院って何処にあります?リーベルに来たの久々で、地理わからなくて。」
治療器具を片付けながら、式夜に尋ねる。
「そうですね、ココからだと・・東区の病院が一番近いです。」
立ち上がる式夜。
「あ!ダメです。まだ傷が治ってないんですから!!」
式夜に駆け寄り強引に寝かせる。
「・・・生きて・・いるのか。」
リースが意識を取り戻す。
「リースさん!よかった・・」
リースの声に安堵し、アイズに阻まれて起こせない上半身から力を抜いて、横になる。
「脈拍、心音ともに異常なし。ただ、少し血を流しすぎてます。無茶をすれば貧血ですぐ倒れますから気をつけてください。」
脈を取っていたアイズが諭すようにリースに声をかける。
トトトトト・・
階段を静かに登ってくる狼。黄金色の瞳がアイズを見つけ、側に走り寄ってくる。
「キティ、下は問題なかった?」
「ガウ。」
頷くように小さく吼える。
「それじゃあ・・行きましょうか。リースさん、式夜さんはこの子に乗ってください。」
キティと呼ばれた白狼はその場で伏せ、静かに二人が乗るのを待っている。
「・・・犬は苦手だ。」
リースが小さく困ったように言う。
「えぇ〜・・可愛いじゃないですか。毛だってこんなにふわふわで。」
3メートル近いキティを撫でる150センチ程度のアイズ。
「・・昔から犬だけはダメなんだ。私だって何で怖いのかも良く解らないんだが・・」
側にあったクロノ・レベリオンを手に取り、ズルズルとキティから離れるリース。
「・・・リースさん、今はそんな事言ってる場合じゃ無いと思いますけど。」
ゆっくりと立ち上がると、夕凪の欠片を拾い、鞘の中へと入れていく式夜。
「・・・歩く。」
立ち上がるとリースはゆっくりと階段へと歩いていく。
「キティ、おいで。」
アイズが声をかけるとアイズの後を追って歩き始める。
「式夜さん、この子の背に乗ってください。」
式夜の側まで行くと声をかける。
「・・・いえ、私も歩きます。」
周辺に散らばった欠片を拾い集め終わった式夜がリースを追うように歩く。
「仕方無いです〜・・お二人共、辛かったら言ってください。私で良かったら肩をお貸ししますから。」
困ったようにキティの背を撫でながら式夜とリースを追って歩く。
10階建ての建物の屋上からなので地上まで降りるのは時間がかかる。

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