《MUMEI》
プレゼント
「お邪魔します」
「わぁ!!上がって上がって!!久しぶりだねぇ〜!!」
「久しぶりって言っても、最後にあったの1週間前ぐらいだけどね」
嬉しそうに話す今宵を見て、歩雪は呆れながら笑った。
カレンダーを見ると、もう7月最後の日。
歩雪は勝手知ったる今宵の家に訪れた。
「暑いねぇ。あ、座ってて!!今なんか冷たいもの持ってくるから!!」
「ありがと」
歩雪は今宵の背中を目で追いながら椅子に腰かける。
こーはいつ見ても元気だなぁ。
この暑い日にも関わらず。
っていうかこーは夏の方が元気だな、寒い日より。
・・・・・誕生日だから?
歩雪が少し的外れなことを考えていると、今宵が2つの皿を持ってきた。
「お待たせ〜!!ゼリーでいい?はい!!」
「ん。ありがと」
歩雪の目の前に皿を置くと、今宵はその真正面に腰かけた。
今宵は一口ゼリーを口へ運ぶと、顔を綻ばせ、歩雪に一生懸命語り始める。
「美味しいんだよ、このゼリー!!お母さんがもらってきたものなんだけどね、すっごく果物の味がするの!!喉ごしもいいしねぇ〜・・・・・・」
「へー」
思いっきり力説をする今宵を見て、歩雪も興味津々にゼリーを一口運ぶ。
今宵はじっと歩雪の方を見つめた。
「どぉ?」
「ん。おいしいよ。砂糖の甘さじゃなくて、果物の甘さだし」
「そうだよね!!よかった〜!!」
今宵は安心したように笑い、また一口ゼリーを掬って口へ運ぶ。
歩雪くんも食べられて良かった〜!!
あんまり甘いの好きじゃないから、ちょっと心配だったんだけど。
次々とゼリーを嬉しそうに口へ運ぶ今宵を見て、歩雪は思い出したように話しかけた。
「あ。聞きたいことがあるんだけど」
「ん?何?」
今宵はせっせと動かしていた手を休め、歩雪の方を見る。
「来月の4日、何欲しい?」
「うん?何で?」
「何でって。誕生日でしょ、こーの」
「うぁぁ!!忘れてた!!」
私って記念日の感覚って薄いのかな〜?
自分の誕生日忘れるって・・・・・・。
真剣に考え込む今宵を見て、歩雪は呆れた顔を見せる。
「忘れてたって・・・・・・。で、何が欲しい?縫いぐるみ?」
「え、いいのに。でも縫いぐるみは一昨年もらったよ?うさちゃんの!!ちゃんと部屋に飾ってるよ〜!!」
思い出しながら言う今宵に、歩雪はうーん、と考える。
「じゃあ目覚し時計?・・・・・・あっても起きないけど」
「それは去年もらったよ〜!!あれもうさちゃんの!!起きれないけどちゃんと使ってるもん!!」
開き直る今宵を見て、歩雪はまた唸りながら考える。
毎年毎年、ちゃんと考えてくれるんだよね、歩雪くん。
私の好みのものはもちろん、あれば嬉しいなっていうものをくれるし・・・・・・。
今宵は真剣に悩む歩雪を見て、口元を緩めた。
あ!!
ふと、今宵の頭にあることが浮かぶ。
でも・・・・・・迷惑かな?
「何?何かあった?欲しいもの」
「うーん。欲しいものっていうか・・・・・・」
「何でもいいよ。あんまり無茶なものじゃなきゃ」
言うだけ、言ってみようか。
今宵は少し俯き加減で口を開いた。
「あのね、迷惑じゃなきゃでいいんだけど・・・・・・」
「いいよ。何?」
「あそこ。・・・・・・ヒマワリ畑に一緒に行ってほしいの」
「毎年1人で行ってるとこでしょ?いいの、オレも行って?」
「うん。歩雪くんも一緒に来てほしいんだけど・・・・・・。駄目?」
ちら、と今宵が歩雪の顔を見た。
私の大事な場所に歩雪くんも一緒に来てほしい。
歩雪くんも大事な人だから・・・・・・。
心配そうに見つめる今宵に、歩雪は優しく笑いかける。
「いいよ。オレでいいなら」
「ホント!?ありがと!!」
今宵の表情がパッと明るくなった。
その顔を見て、歩雪は笑いながら優しく今宵の頭を撫でる。
「キレイに咲いてるといいね。ヒマワリ」
「うん!!」
今宵は頭を撫でられながら、その日を待ちわびた。
沢山のヒマワリを歩雪と一緒に見ることを。
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