《MUMEI》

    赤高ベンチ



「気付いたみたいだね。」



「こうも…上手くいくもんなんですか…?」



「まぁ…いわゆる心理的トラップだよね。」



「心理的トラップ…?」



「オールコートマンツーが解除された時点で、


秀皇はこう思ったはずだよ。


良かった。
走る負担が少しは減ったって。」



「でも実際は…」



「そう。実際は変わらない。


元々スピードを武器にうちのディフェンスを攻略してたんだ。


やることは何も変わらない。


だけど、


状況の違いは確実にある。


今、向こうは一瞬気が緩んでしまった。


こうなると気持ち的に疲労がぐっと増す。


気持ちを継続していればこの現象は起きない。


これはあくまでもプラスαの展開だけどね。」



「…は?」



「本来の目的はさっき話した通りだよ。


精神的ダメージを与えたのはプラスαでしかない。


だってそうでしょ?


向こうのセットプレーがどんな物かなんて知らなかったんだもん。


試合前からここまでは予想つかないさ。」



「た…確かに…」



「ま、本来の目的も確実に達成されてるわけだけどね。」

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