《MUMEI》

「気持ち悪い。離れろクソ野郎」

「気持ち悪いとは心外だな。これでも美形な方だと思っていたのだが」

「死ねナルシスト」


男はやはりニヤニヤと気持ちの悪い笑いを湛えたまま、再び椅子に腰を下ろす。なぜこんなにもイライラするのだろうか。この男は性に合わない。男はそんな俺に構わず紅茶を啜る。ああ、なんて野郎だ。腸が煮え繰り返りそうな感覚さえする。別段、怒っているわけではないのだが。


「帰る」


中身の入ったカップをそのままに席を立つ。そして足早に店を出ようとすれば、男に手首を捕まれた。待ちたまえ。


「どこに」

「家だ。……着いてくるんじゃねえぞ。来たら殺してやる」

「それはそれは、ずいぶん魅力的なお出迎えだね」

「気狂いが」


腕を強く振れば男の手は簡単に離れた。すぐに店を出、家まで走って帰った。


『フリッピー君は、どうして君といるんだい』

「……知るか、そんなこと」


本人に聞きやがれ。俺はあいつに生み出されたんだから知るはずもない。馬鹿野郎め、少し考えたらわかるだろうに。ヤツは学習しない。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫