《MUMEI》

―話しに夢中になっていると、
後ろから強く叩かれた。


いや、叩かれたよりも
“殴られた”に近いかもね。


「‥‥っ、‥‥?」



一瞬、何が起きたのか紗稀には
よく分からなかった。



でも。




おそるおそる振り向くと‥‥。




「ノート、貸してって言ったじゃん‥‥」



「あ、ごめん」



そう言って、紗稀の手からノートをスルリと取っていく。




‥‥見た感じで、察した。



すごく不機嫌な山瀬くん。



いつにもない、ムスッとした表情だった。

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