《MUMEI》

―紗稀、何かしたっけ?



頭がぐるぐると回っている。

気持ちの整理がつかない。




山瀬くんの席にそっと歩み寄る。


「‥‥怒ってる?」



「‥‥別に。ただ眠気が覚めてないだけだよ」



そう言って、カリカリとノートを移し始めた。





いつもなら違うのに―。



優しく撫でる手も。



いつもの優しい笑顔も。



たまに見せる照れ笑いも。






紗稀は胸がキューっと締め付けられた気持ちになった。




―山瀬くん、一体どうしちゃったの‥‥?

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