《MUMEI》

僕の”イワン(Ivan)”というロシア系の名前は、英語読みになると”イアン(Ian)”になり、Iの読みがJに変化して”ヨハン(Johan)”になってそれが転じてジョン(John)という形になるので、英語圏ではたまに言い変えられて呼ばれる事もあった。

なので、キース殿の『ジョン!』呼びかけに思わず条件反射的に返事をしてしまったのだった。

「ハハハ!そう言えば同じだな、そう言えば!」
「ワフワフ!!」
「あわわ///」

今まで大喜びしながらキース殿にじゃれていたほとんど僕と同じくらいの大きなゴール・デンレトリバーが、今度は僕を見つけてこっちに向かって飛びかかってきた。

「ぅわああぁι」
「こらジョン、同じ名前のお客さんだぞ♪」

逞しいキース殿と違って小さな拙者はそのままジョンに押し倒されてしまい、その大きな身体の犬が飛びかかってくる事に驚いてとっさに身構えたら、ジョンは僕の胸の上を前足でバタバタと引っかくと顔中をペロペロと舐め回してきた。

「わあッ///ん…ッ…くぅぅι///」
「キュンキュン!」
「さっそくジョンに気に入られたみたいだな♪よかった、そしてよかった!」

と言って、いつものポーズで喜んでいるキース殿。

キース殿に喜んでもらえるなら、拙者も本望でござるよ…。


「うぅ……ι」

ジョンに激しいスキンシップで出迎えられてフラフラになっていた僕を見て、キース殿は笑いながら助け起こしてくれた。

「イワン君、結構派手にやられたなぁ!シャワーでも浴びたまえ」
「か…かしこまり候…」

ヘロヘロになりながらも立ち上がった僕を見つめるジョンの丸くキラキラした瞳は、飼い主にとてもよく似ていた。

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