《MUMEI》
凶斧
リースが今回の事件に関しての説明を式夜とアイズに対して説明をしながら降りていく。
「・・そうだったんですか。」
式夜が説明を聞いて隣を歩くリースに声をかける。
「あぁ。だが・・今から彩姉さんに話せば阻止できるはず。」
強く槍を握り締めながら吹っ切るように笑みを浮かべる。
「お前ナンデ生きてるんだ?「デュアルブレイド」はどうした。」
その笑みを壊す声。
深夜の公園でリースに大怪我を負わせ、殺そうとした大斧使いが階段から上がってきていた。
ドガン!!
質問と同時に繰り出された一撃が階段を破壊し、視界を覆う。
「はぁ・・はぁ・・」
階段から部屋へと転がり込んだ式夜が息も荒く、膝を床に付ける。
ポタ・・ポタ・・
地面に紅い雫が落ちる。
「く・・そ。」
立ち上がる式夜、だが出血は止まらず床に紅い染みを広げている。
「無事か?」
隣に佇むリースも傷が開き血が流れ始めている。
「キティ、ありがとう。」
大斧が振るわれた事を察知し三人を突き飛ばしたのはキティ。
「グルルルル・・」
アイズの側で獰猛な唸りを上げながら階段の辺りを睨み付けている。
「やれやれ・・半死人が二匹と獣に雑魚一つか。つまんねぇな。」
ゆっくりと室内に入ってくる大斧を構えた男。
「・・・誰だが知りませんが、この二人は重傷です。道を空けてください。」
アイズが一歩前に出て、声を上げる。
「ひゃっはっは!雑魚が何を言うかと思えば・・見逃せ?ふざけんなよ!お前等はココで死ぬんだよ。このハルバー・ロッドースの手にかかって死ねるんだ喜んでくたばれ!!」
一気に間合いを詰め、アイズに向かって大斧が振るわれる。
ギィィン・・
「ココは・・私が引き受ける。二人は早く彩姉さんに。」
アイズとハルバーの間に割り込むように入り、大斧の一撃を受け止めているリース。
ポタ・・ポタ・・
ギィィン!
再度振るわれた一撃を受け流し、二人を庇うように槍を構える。
「オィオィ・・半死人が何頑張ってるんだよ!正義の味方かってんだ、バーカ!」
容赦なく振るわれる大斧の連撃。
キキィン!
キン!
次々と体を掠り、傷が増えていく。
「・・・キティ、式夜さんを連れて行って!」
「私が残ります、少なくとも・・アイズがココで戦えるとは思わない。キティと一緒に主人の所へ。」
アイズの言葉を遮り、静かに全身に魔力を収束する式夜。
「ですが!」
「私の場合、途中で気を失う可能性があります、それでは意味が無いんです。」
懐から一本の小刀を取り出し、アイズに笑顔を向ける。彩詩やハンディング以外に見せるのは初めてだが、うまく笑えただろうか。
(主人に無理やり持たされていたんですが・・役に立ちましたね。)
「・・・・・・・・必ず、助けを呼びます!!だから・・」
言いながら、キティの背に飛び乗り、階段を駆け下りていくアイズ。
「行かせるかよ!!」
アイズの行動に気がついたハルバーが大斧を振るう。斧が衝撃波を纏い・・
ガィィン・・
式夜が瞬動で間合いを詰め、大斧の一撃を受け止め、衝撃波が飛ぶのを防ぐ。
その場で暴発した衝撃波に全身を切り刻まれながら後退、小刀を構え直す。
「式夜・・」
クロノ・レベリオンを杖代わりにして、ようやく立っているリースが呆然と声を上げる。
「半死人なら・・二人居れば一人分くらいにはなるでしょう。」
震える腕で小刀を構えながら、言葉を紡ぐ。

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