《MUMEI》

水槽に向かって、本を投げ付けられ、フイリプは声にならない声をあげた。

水槽はびくともしないが、フイリプから、妻への愛情なんてものが、失望へと変化していた。

ぐしゃぐしゃと、怒りで歪んだ顔は、鬼女の面の如く恐ろしい。

フイリプは、自分の美的感性を共感してくれていた、妻の理解の深さと、知性に尊敬して、夫婦になったつもりであった。

かつては、穏やかだった彼女は、今となっては、なにをしでかすか、わからない、そう直感的に感じ取れた。

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