《MUMEI》
女の子の準備
「うーん・・・・・・。どれにしよう、服?」

今宵はパジャマのまま、右手に水玉でバルーンタイプのワンピース、左手に重ね着用のタンクトップを2枚と白いショートパンツを持って比べていた。

どっちにしよう?

早くしないと歩雪くん待ってるよ〜!!

今宵は、むー、としばらく悩む。

「決めた!!ワンピースにしよう!!」

今宵は決めるや否や、さっさとパジャマを脱いでワンピースに腕を通す。

時間無いから着るのが簡単な方にしよう、と悩んでいた時間が無駄になる選択であったが。

「か、髪!!髪結んでない!!」

今宵は慌てていつものように髪型を整える。

ふと、うさぎの目覚し時計に目をやると、今宵の目が点になった。

10時・・・・・・43分?

「うわわわ!!13分も過ぎてるよ!!」

服に悩みすぎだって!!

今宵は自分に突っ込みを入れると、ハンガーにかけてあったカーディガンを羽織る。

そして、辛うじて昨日の内に準備してあったバックを持つと、慌てて階段を駆け下りた。

歩雪くん呆れて帰ったりしてないよね〜?

この仰々しい音に気がついた歩雪は、リビングから出てくる。

「あ、下りてきた」

「ごめんね!!遅くなって!!」

「いいよ別に。紅茶頂いてたし」

必死に謝る今宵に、歩雪は何を今更、と言う顔をして答えた。

いつもことだし。

こーを待つことなんか。

歩雪がこんなことを考えてることなんて知りもしない今宵は、まだ必死に謝っている。

「ホンットにごめんね!!ごめんなさい〜!!自分で行きたいって行ったのに〜!!」

「もういいから。行くよ」

歩雪は今宵の頭にポンッと手をのせると、口元を緩めた。

「うう。ごめんなさい」

いつもこうして許してもらっちゃうんだよなぁ・・・・・・。

情けない・・・・・・。

今宵はしゅん、と子犬のように落ち込んだ。

「何やってんの、こー。行くよ。お邪魔しました」

「あわ!!待ってよ歩雪くん!!行ってきます〜!!」

歩雪は一声加奈子に声をかけると、外に出た。

慌てて今宵もその後を追う。

「行ってらっしゃい!!」

加奈子は少し遅れて玄関を覗くと、少し微笑んだ。

よかったわ、今宵にもああいう人ができて。

あの場所に一緒に行くってことは、とても大事な人なんでしょう?

私にはもう、いないけど・・・・・・。

ふーくんなら、きっと今宵を支えてくれるわよね?

加奈子は今は亡き影を思い、心を痛めた。

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