《MUMEI》







「はあ…」


「なにしてんだよ、自分家だろ?」

「…うん…、まあ…」

自宅前で立ち往生約二分。
流石に関東人の聖ちゃんも痺れを切らす。

でもなあ、なんて言おう。オカンちょっと頭硬いとこあるしオトンはオカンに右に習えだし。

いや、いずれは言うつもりだったけどさー、だって俺聖ちゃん家に養子に入って結婚してるも同然になるつもりだし?



やっぱり今が今なんて心の準備が…


つか遠回しにちょっとずつカミングアウトしてから聖ちゃん紹介したかったっつーか……ブツブツ…




ピンポ〜ンッッ!!

「う゛あッ!」


「何ブツブツ言ってんだよ馬鹿」



聖ちゃんそりゃないよおッッ!!



聖ちゃんがチャイムを押すなり扉がガチャリと開いた。



「は〜い、つて何!貢やないのっ!何自分家のチャイム押してんねん」






―――昔懐かし、ヤンキーメイク、プレイボーイのジャージを着た… 僕のオカン登場……。




「こんにちは!はじめましてッ!僕長沢貢君とお付き合いしている佐伯聖と申しますッ!」


「!!!!!!」



一瞬で全身が凍った!目の前が暗くなった!



相変わらずはきはきした話し方、何処までも通る高い声…。


きっと礼儀正しく頭も下げたに違いない…。




「…なにしてんの貢」


オカンの呆れた声…。






ああ…




どうしよう…。








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