《MUMEI》
後日談
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「…最っ低だっ!」

思わず頭を抱えて低い声で呻いた。もう見るに耐えない。紙を握りしめていた両手に力がこもり、クシャッと微かに音が鳴る。

放課後、『怪奇倶楽部』の部室で俺は、今までで最も絶望的な気持ちに打ちひしがれていた。

俺の様子に気づいたのか、目の前に座っている憂が顔をあげる。

「どうかしたの?」

平淡な抑揚で彼女は返した。俺は顔をあげて涼やかな彼女の顔を見る。

「どうしたも何も、大変なことになった…」

かすれた声で呟いて、しわくちゃになった紙を憂に向かって放った。彼女は何てことないような顔をしてその紙のシワを丁寧に延ばし目を通す。

「…43点…これは数学のテストね?」

わざわざ点数を読み上げて尋ねてくる。一気に現実を突きつけられて俺はげんなりした。

「まだあるぞ。こっちが現国で、これが生物だ」

鞄の中から何枚かの紙を取り出しながら、次々に彼女に手渡す。全て俺の答案用紙だ。

彼女は冷めた目でそれらの用紙を順に眺めたあと、ふうっとため息をついた。

「だいたい平均が49点というところかしら?」

俺は頷き、それくらいだね、と力なく答えた。憂は首を傾げる。

「50点に満たない科目は、確か夏休みに特別補講を受けなければならないと先生が言っていたわ」

俺はまた頷いた。

「自慢じゃないがその該当科目が4つもある」

再び憂は俺の答案用紙をザッと眺め、そのようね、と淡々と相槌を打った。
俺はまた頭を抱えた。

「あの都市伝説のせいで勉強どころじゃなかったからこんなことに…」

俺の呟きに彼女は、お気の毒さま、と他人事のように答えながら答案用紙を返した。



《写り込む女》の魔の手から逃れることができた俺は、予定通り期末テストを受けることになった。

いかにして女から逃げて生き残るかということばかりを考えていたので、まともに勉強もできず、まんまと赤点をとるハメになったのだ。でもそれは仕方がない結果だと思う。

生きるか死ぬかの瀬戸際で呑気にテスト勉強ができるヤツは愚鈍かバカかどっちかだ。



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